窓辺の風鈴、寝室の蚊帳、扇子片手に夕涼み……。猛暑が続く今年、日本の伝統的な夏グッズが復活の兆しだ。けれど、ただのリバイバルじゃない。伝統に回帰しながらも、現代風にアレンジされている。懐かしのグッズで、健康的に夏を乗り切ってみませんか。

東京・渋谷ロフトの「夏の風物詩コーナー」
「和」に心の安らぎ/現代風アレンジも
梅雨らしい梅雨もないまま、猛暑へと突入した今年。あまりの暑さに、エアコンや夏物衣料などの季節商品が売れに売れている。一方で、日本の夏を彩ったかつての定番がこのところ、勢いを盛り返している。
「和の涼しげなインテリアや小物が、去年に比べて動いているんですよ。いぐさのクッションやまくら、マットなどは、倍以上の売れ行きです」と渋谷ロフトの店舗バイヤー鈴木武さん(42)。「洋風の生活の中に和をうまく採り入れることで、涼しさと心の安らぎを得ているんじゃないでしょうか」
渋谷ロフトでは夏場、江戸風鈴などの「夏の風物詩」コーナーを設けている。今年は梅雨明けが早かった分、扇子の売れ行きも例年より1、2週間早くピークを迎えた。平日は130〜150本、休日ともなると400本近くが売れる、という。昨年あたりからは、紫外線を抑える「UVカット扇子」などのユニークな商品も登場した。店内では、若い女性やカップルたちが入れ替わり立ち替わり、風鈴や扇子を選んでいく。
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風鈴のガラスを吹く東京・江戸川
「篠原風鈴本舗」の篠原儀治さん
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「確かに、風鈴の売れ行きもいいみたいですよ。でも最近は、ご近所の人から『風鈴がうるさい!』なんて言われる時代になりましたからねえ」
江戸風鈴を、東京都江戸川区の工房で手作りしている「篠原風鈴本舗」の篠原儀治さん(76)は、苦笑する。鉄製や輸入物に押されて同業者は次々、店を畳み、江戸風鈴を製造しているのは、篠原さんだけになった。が、時勢に負けてはいない。
今年の5月から、部屋の中で楽しめる「卓上の鈴」を、作り始めた。手作りの木の台につるされた直径5センチほどのかわいらしい風鈴。これを室内に置けば、邪魔にならずに、目にも涼しいというわけだ。
「風鈴のイヤリングなんかも作ったんですよ」。篠原さんは、伝統の中に新しさを採り入れている。
かつてどこの家にもあった蚊帳を作っている業者は、国内でもほんのわずかしか残っていない。静岡県磐田市で蚊帳を製造販売している「菊屋」の経営者三島治さん(45)は、その一人。6年前からインターネット販売を始めた。
「インターネットで販売を始めてから、毎年、倍々で注文が増えています。麻100%のオリジナルの蚊帳を作ったら、みなさん、『洋室にもベッドにも合う』と言ってくださって」。今年は、カタログによる通信販売も始めた。
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東京都葛飾区にある江戸切り子の工房「おじま」では、洋風のサンドブラストなど新しい技法を採り入れたガラス器を切り子とともに作っている。浅草ののれん専門店「べんがら」の麻のれんは、モダンなデザインが、若い男性客や外国人客にも好評。今夏は例年の2、3倍も売れている、という。
浴衣の世界では、またひと味違った流れが起きているようだ。
「浴衣ブームというのは、実は十数年前が始まりでした。急に若い人や着物になじみのない方が、浴衣をお召しになるようになったんです」
東京・日本橋「竺仙」の浴衣地
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天保13(1842)年創業の浴衣の老舗(しにせ)「竺仙」の小川文男社長(54)が教えてくれた。
「中心は1万円で一式そろえるくらいの感覚の方々でした。それが今年、本来の浴衣へ、本物を知りたい、と変わってきた。派手になっていた柄も、紺と白を中心にした涼しげな柄へとブームが移っています」
秋草などの古典柄や、4万円前後の高級浴衣もよく出るそうだ。
日本の夏の風情は残しつつ、現代の生活スタイルに合わせて涼をとる。どこか懐かしく小粋(こいき)な夏の風物詩がよみがえった。