サザエさん魔よけの蚊帳

サザエさんを探して 取材

蚊帳とサザエさん朝日新聞

昭和30年代ブームなどと云われるなか、サザエさんをさがしてというタイトルで朝日新聞の土曜版で連載されています。

そんなことこんなことを朝日新聞の保科さんが菊屋にお越しくださいました。そして上記のような素敵な記事にされました。

魔よけにもなる虫よけ

サザエさんの四コマ漫画に蚊帳

蚊帳は夏の風物詩

ただでさえ寝苦しい真夏の夜に、枕元でつかず離れず唸(うな)りやまない蚊の羽音ほど、いまいましいものはない。

 たった1匹、寝室に侵入されただけでこれほど気の滅入(めい)る蚊に群れをなして吸血されたら、おぞましい昆虫パニック映画で断末魔とともに、なすすべもなく倒れる最初の犠牲者のような無力感を呪うほかないだろう。

 そうなるのはしかし、昭和30年代まで、絶えまない蚊の襲来など夏の日常のありふれた風物だったことを忘れてしまっているからだ。その年代の「サザエさん」の連載でも、夏になると蚊のネタはつきもので、最強の対蚊防御装置として頼りにされていたのが蚊帳だった。

 蚊帳はそのころ必需品だったから、庶民の家の、茶の間を兼ねていたかも知れない寝間の四隅の柱には、蚊帳から伸びたつり手紐(ひも)の金輪を引っかけるための曲げ釘(くぎ)が、大人の頭上あたりに打ちつけてあったものだ。

 さらに蚊帳には、雷よけのシェルターになるという古くからの伝承があった。雷鳴が響いたら急いで蚊帳をつり、へそを手で覆い隠して飛びこめ、と言い伝えられてきたようだ。

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 今回、掲載した作品でも、一天にわかにかき曇ったのであろう土砂降りの雷雨に恐れをなした通りすがりの人々が、雨宿りでは収まらず、磯野家の蚊帳の中に続々と飛びこんでくる。年配者まで、とっさに蚊帳で難を逃れようとするのは、麻や木綿の布地が電撃の絶縁体になる、とも信じられていたからで、あながち子どもだましの呪(まじな)いともいい切れないようだ。

蚊帳を復活させた菊屋

 Jリーグのジュビロ磐田にちなんだ静岡県の磐田駅前商店街「ジュビロード」にある寝具店「菊屋」の2代目主人、三島治さんは、凋落(ちょうらく)した蚊帳の復権に心血を注いでいる。

 蚊帳の全国の生産量は、1965(昭和40)年の約300万張でピークに達した後、アルミサッシの網戸とエアコンの普及であっけなく廃れてしまった。00年に日本蚊帳商工組合も解散。現在の生産量は推定で3万張に満たないようだ。

 ところが、三島さんは1997年から始めたネット通販サイトで年間1500から1800張もの蚊帳を売っている。

 「エアコンが苦手なので天然の夜風に吹かれて眠りたいとか、アトピーの子がいるので殺虫剤を使いたくないという人たちから、引き合いがあったので取り扱うようになりました。虫よけの効果だけでなく、淡い布地で閉じられた空間に家族が身を寄せ合う安らかな寝心地にも惹(ひ)かれるらしい。使命を終えたと思われ、いうなれば『蚊帳の外』に追いやられた蚊帳がITで蘇生したわけです」

 作家の佐藤愛子さんが昨年、文芸春秋の特集「消えた『昭和』」に寄せたエッセー「蚊帳」に、「(蚊帳の)中に入ると知らない家に行ったようで、心が弾んでじっとしていられない。そわそわと出たり入ったりしては叱(しか)られるのだった」という一文があった。前出の「菊屋」の三島さんも「夏が終わっても蚊帳を片付けられず、一年中、つって寝ているというお客さんもいるようです」という。

 蚊帳は虫よけばかりでなく、ある種の魔よけのような働きもして、ささくれていたりこわ張っていたりする人の心を慰撫(いぶ)するようだ。

どうぞ蚊帳の中へ

 

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