蚊帳は懐かしき昭和のモノ?

懐かしき昭和のモノたち

萌黄(もえぎ)の蚊帳

蚊帳と蚊取り線香

 真夏の暑い夜。戸を開けっ放しにし、天井からつった蚊帳の中に入る。縁側にはブタの香炉の蚊取り線香。
蚊が入らないようにさっと蚊帳のすそを上げ急いで入る。

蚊帳の中は異空間に感じられた。時折、父親がその異空間に蛍を放した。暗闇でうっすら
光る蛍の光は何と幻想的だったことか。
翌朝、その死骸は気持ち悪かったけど。まさに「キンチョーの夏、日本の夏」だった。
 昭和の日本の夏といえば、まずは蚊帳だ。天井の四隅につるされた蚊帳は、戸を開けっ放しでも蚊が入らない優れもの。
涼しくて蚊に食われないという2つのメリットを兼ね備えていた。昔は開けっ放しで寝るのが普通、さらにそれほど蚊が多かったのだ。

蚊帳の歴史

 蚊帳の歴史は古い。「播磨国風土記」で応仁天皇が播磨の国を巡幸の際、賀野の里という場所で殿を作り蚊帳を張ったという記録が残っている。
本格的に作られたのは奈良時代。磨から手法が伝わり、材質は綿や木綿だった。
原型はテントタイフで昼間はずらし、夜になると広げるスタイル。
天井からつるし始めるのは江戸時代に入ってからだ。
昭和40年以降、鉄筋コンクリートの集合住宅が造られ始めてから急激に衰退し、アルミサッシやクーラーの出現で蚊帳は過去のものになった。

と思ったら、蚊帳は21世紀に見事に蘇っていた。マラリアなど蚊が媒介する病気の発生場所で、この蚊帳が見直されてきている。
モスキートネットと呼ばれ、病気予防に一役買っているのだ。
 また、蚊帳と並んで日本の夏を感じさせる蚊取り線香も、最近ではマット式やリキッド式の電気蚊取りに進化を遂げた。

蚊取り線香はキンチョー(大日本除虫菊㈱)の創始者、上山英一郎が除虫菊の種子を手に入れた時から始まる。除虫菊を栽培し、棒状の線香に混ぜて明治23年、世界初の棒状蚊取り線香を誕生させるが、これは燃焼時間が短い。そこで編み出されたのが、現在の渦巻き式。
こちらも蚊が媒介する感染症、デング熱、黄熱病などが発生している場所で必要とされている。

家族はひとつ蚊帳の中

 でも、やはり蚊取り線香は日本人にとって特別なものだ。あの香りをかぐと夏が来たなという思いにさせられる。蚊帳と併せて、母親の胎内のような安心感すら与えてくれる夏の器異。蚊帳から出た時に感じる疎外感を「蚊帳の外」と表した表現は秀逸だ。

(ルポライター・山崎夏生)

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