嫌な夏の虫も 疲労やストレスも
これさえあれば「蚊帳の外」
平成21年7月21日= 麻生総理の「無理やり解散」の日に発売の週刊朝日。
戦後、長きにわたって政権を維持してきた自民分裂と、なんとも歴史的な発行となった【週刊朝日】の7月31日号に、歴史が変わっても変わらないでいてほしい、人々の暖かさ、やさしさを、形にした菊紋和(きくもんなごみ)蚊帳が紹介されました。
■ 菊紋和(きくもんなごみ)蚊帳
広大な敷地の「ネバ-ランド」が話題になっているけれど、住宅は広ければいいってものではない、と主張ずる知人の建築家がいる。
とりわけ個室は狭いほうがよい、と意外なことを言う。
聞けば、人間は狭いところにいると落ち着くのだそうだ。悲しいことがあったときは狭い空間にいると気持ちが鎮まり、気分が回復したら家族がいる居間などに出てくるのが精神衛生上、理想的だとか。
日本には昔からそんな「部屋」があった。蚊帳である。
蚊なとの虫から身分守るためのネットだが、中にいると囲まれ怒があり、安心感もひとしお。
ここで紹介する「菊紋和(きくもんなごみ)」と銘打たれた蚊帳の中に入ったとき、子どものときのそんな落ちついた気分がよみがえった。
製造を担当する菊屋によると、虫よけの目的がなくてもベッドの周囲に垂らせる蚊帳を、と特別注文も入るそうだ。
安眠の手段になるとか。やっぱり、という感がある。
蚊帳が日水に入ってきたのは紀元5世紀ともいわれる。当初は綿や絹だったが、琵琶湖畔で作られた近江蚊帳と呼ばれた麻のものが主流に。
その美点は、吸湿性にすぐれ、かつそのために蚊帳内の温度を下げてくれるところと、ものの本にはある。
江戸時代までは庶民には高嶺の花だったそうだか、明治になっていっきに一般家庭に普及。
冷房のない部屋で開けっ放しの窓から侵入する夏の虫から守ってくれる手段として、日本中で重宝された。
蚊帳が一般家庭から消えたのは冷房の普及によるものという。
しかし、蚊取り線香の煙はからだによくないとか、冷房は体温を下げすぎるとか、現代の健康ブームのなか、従来の「常識」に疑問がさしはさまれ、蚊帳が再評価されるように。
この「和(なごみ)」はシラス漁用の網にビントを得た「カラミ織」なので洗濯も可能と、より現代的だ
。
たしかに、使う用途に応じてひとり用から注文できるし、染めもバリエーションが多いので、ひと工夫すれば、昔ふうどころか、新しいインテリアを作ることもできる楽しさも。
防虫だけでなく、心を豊かにしてくれる効用をもつ蚊帳。
現代に暮らすわれわれにこそ必要な道具かも。